アメリカ、カナダの販売子会社の命運【海外ビジネス事例⑤】

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アメリカ、カナダへの進出

アメリカ、カナダでの販売子会社(完成品:電気製品等)の成功は非常に困難を要します。基本的には日本或いはアジアで生産した完成品を販売する場合、競合他社との価格競争によって適正な利益を確保できないのが現状です。従って、他社と差別化が明確に打ち出せる製品であることが最低限の条件です。

アメリカ、カナダでの販売子会社の運営は直接販売と代理店経由の間接販売があります。直接販売においては、自前で広大な地域に販売網、サービス網を整備する必要が有り、莫大な投資が伴います。一方で代理店販売による間接販売は、自前の投資は必要ではありませんが、販売、サービスを他社に委ねるため真剣に販売、サービスをしてもらえるのか不安が残り、自社での管理が難しいと言えます。

代理店販売の困難とその打開

私はアメリカで代理店を使った間接販売の販売子会社を運営していたことがあります。代理店において30-40%の利益が出るような価格設定をしなければならず、販売子会社の利益率は非常に低いものになり、経営の健全化においては非常に苦労を強いられました。

まず最初に販売不振の理由を深耕していくと、製品が市場にニーズに合っていない、差別化の徹底が不十分であることが判明。そこで、正確なニーズを把握すべく同業関連の技術会社を現地にて買収。これを足掛かりに、市場に合った物つくり、差別化ができる物つくりを企画。さらにその製品を日本で生産してもらう等を推進。こうしたプロセスを経て、結果として経営健全化を急速に図ることを実現。

もっとも会社買収M&Aにおいては、現地の会計士、弁護士に十分関与してもらい、会社価値、不明確な会計処理の徹底的な吟味、且つ、その会社の人材の検証、人員の整理をした上で適正な価格でM&Aを実施することが必須。こうしたプロセスにも別途非常に多くの時間の多くの労力・資金がかかるもの。

このように、代理店販売をしていく予定の販売子会社設立の折は、製品の差別化が十分できており、競合に十分対抗でき、その結果、代理店が優先的に販売、サービスをしてくれることを十分検証したうえで進出することが重要です。

直接販売における莫大な投資

私はカナダでも、販売代理店が直接販売する販売子会社を運営していたことがあります。ただ私が経営を任された時には、既に全カナダにおいて上記のような莫大な投資をした結果として、相応の販売網、サービス網が確立された後でした。このように莫大な投資を経て、安定した販売基盤が既に現地にて確立されている場合は、今度は、次のステージとして、投資の回収と販路拡大。具体的には、少なくとも確立された販売網とサービス網の継続維持、またこれらをベースとした更なる収益の確保と拡大を図っていくことに軸足を移していくこととなります。メンテサービス契約の拡大と消耗品販売の拡充等を重点的に行い、更なる経営の健全化を図りました。

十分な見極めが大切

教訓としては繰り返しになりますが、自製品の競争力について、第三者的に客観的に評価してみることがまず先決です。海外販売会社のその後の命運は、こうした最初の自社製品の競争力の見極めに全てがかかっていると言っても過言ではありません。結果、競争力があると判断された場合は、経営・事業計画を十分に立て、会社設立前に少なくとも6か月間位は、代理店候補と市場を検証したうえで、間接販売から開始していくのが手堅いと私個人的には思っています。

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