三島由紀夫が1970年(昭和45年)自決の前日の11月24日に最後の晩餐となった新橋の鳥鍋の老舗”末げん”に行ってきました。非常に歴史的に感慨深いものがあり、且つ 今まで食した鳥鍋の中でもNO1と位置付けることができる味、サービスでした。
末げん 新橋
末げんは1909年(明治42年)創業の新橋にある老舗料理屋。創業者の丸源一郎が修行した店「末廣」と、彼の名前「源一郎」から「末げん」と称したのが「新橋 末げん」の起源と言われている。三島由紀夫をはじめ多くの著名人(原敬、6代目菊五郎等)がひいきにしていたようです。
入り口の入ったところに、モノクロ写真が飾ってありました。
中央には初代創業者、前列には子供時代の二代目、周りには20名程度の男女。明治・創業時代のお正月の写真だそうです。写っている女性達が全員、日本髪を結っており和服姿。初めて日本に鉄道が走ったころから、新橋駅の目の前(現在のSL広場)にあった末げん。
当時、まさに時代の最先端でさぞ賑やかで華やかな場所であったんだろうな、同時に、周りの景色が変わっても、日本髪を結っていた時代から、100年以上脈々と続く(現在は4代目)老舗ならではの歴史の重みに自然と頭が下がります。
「わ」のコース
今回は三島由紀夫が最後に食したという「わ」のコースを注文しました。「わ」の意味は、輪になって鍋を囲んでひと時を楽しむという意味だそうです。
前菜もさることながら、鳥鍋は絶品で、千葉県産の鶏肉、茨城県産のブランド卵である奥久慈卵、国産マッタケなど選りすぐりの材料を使い、且つ 鳥肉をスープで炊き、しょうゆやポン酢に大根おろしで食するという味の違いを楽しむことができました。
おろしポン酢味
おろししょうゆ味
〆の雑炊
〆の雑炊もマツタケの香りと相まって何とも言えない深いあじわい。また、女性の給仕される方にこれぞプロの技という具合に鍋を完成させ給仕して頂きました。とても”感動”でした。是非、機会が有れば訪問してみて下さい。
〆の鳥雑炊
なお、ランチ時はまかない料理から生まれた親子どんぶり、からあげ定食などが提供されており、開店時間にはいつも長い行列でこちらも変わらずの人気です。
最後の挨拶
三島由紀夫の話に戻りますが、11月24日の食事を終えた三島が帰る際、女将が「またいらしてください」と声をかけると「また来いって言われてもなあ…でも、こんなにきれいな女将がいるならあの世からでも来るかな」と答えたと言われています。
今回はその女将にご挨拶することができました。いまだに非常にお綺麗で笑顔がとても素敵な方でした。三島由紀夫の小説(仮面の告白、金閣寺、豊饒の海、潮騒等)には魅力的なものが多く、一時は、ノーベル文学賞の候補にもなったこともありました。彼は川端康成とも親しかったようです。
今回の末げんでの夕食は歴史を感じながら、歴史上の著名な小説家に思いをはせ、絶品の鳥鍋を食することができ、非常に幸せな時を過ごすことができました。
末げん(新橋)
住所:東京都港区新橋2-15-7
電話:03-3591-6214
営業時間:11:30~13:30/ 17:30~22:00